2009年5月24日日曜日

『やし酒飲み』を読みました

これは非常にイイ。おすすめです。図書館で何気なくめくってみて、冒頭から一気に惹き付けられました。この「グイグイ惹く感じ」は去年ゴーレムを読んだとき以来の手応えでした。文学の面白さってこういうところなのかなあとおもいます。でも自分でもこの「グイグイ惹く感じ」が一体なんなのかよくわかりません。同じ本でも他の人だと感じなかったりするようなので、おそらく本のないようではなく自分自身に起因するものかと思われます。
というのは、一体話のどの部分にどこにその感じが読み取れるのだろうかと読み返してみてもいまいちわからないんですね。たぶん初見で一番強烈に感じるものなのでしょう。
おそらく自分の中の期待がぐんと高まっていくからではないのだろうかとも思います。

だとすると、逆に作り手のことを考えると、面白い話を作るっていうのは本当に難しいことなのだなと思います。面白い作品を作りたいと思うなら、それをその作品の中に混めるのではなく作品を通して相手の心の中に混めなくてはならないということになるからです。でも今はそんなに小難しく考えなくとも、自分が楽しむことを第一に考えるべきだと自分には言い聞かせます。

さて、無駄話はさておき『やし酒飲み』は本当に面白い話です。

私なりに「ぐいぐい惹く感じ」のひとつの理由を考えてみました。冒頭の部分は非常に素朴な文体で淡々と書かれています。そして淡々としていながら、あるいはしているからこそなのかもしれませんが、まったく先が読めない。私たちは、映画や小説を見るのに慣れっこになってしまって無意識に文脈を読んでしまうと言う悪いくせがついています。ありきたりの文脈を裏切ってくれるから僕は惹き付けられたのかもしれません。

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